【対談】水石亜飛夢×上村奈帆監督 ー 『根矢涼香、映画監督になる。』 2020.11.24


水石亜飛夢が、いま一番会いたい監督と対談する「トーク・ザ・シネマ」。記念すべき初回は『根矢涼香、映画監督になる。』が劇場公開中の上村奈帆監督をゲストにお迎え。主人公「根矢涼香」が想いを寄せる「啓太」を演じた水石さんと監督の対談が実現。作品の見どころや、オーディションでの印象、役作りについてのお話が飛び出しました。
水石亜飛夢
2012年ミュージカル「テニスの王子様2nd」にて俳優デビュー。
2014年TVシリーズ「牙狼~魔戒の花~」にて準主役に抜擢される。
2017年映画「鋼の錬金術師」にてアルフォンス・エルリックの声を演じ全国的に注目される。ドラマ「あなたの番です。」ドラマ「相棒17」、映画「青夏」映画「センセイ君主」など話題作に出演。
2020年3月よりテレビ朝日系列「魔進戦隊キラメイジャー」押切時雨役/キラメイブルーにて出演中。
上村奈帆 監督
1988年生まれ。日本映画学校を卒業後、照明部を経て脚本家の道に進む。長編処女作「蒼のざらざら」が第40回城戸賞最終選考。その後映画美学校脚本コースに入学し、在学中に執筆した「星屑みたいだ」が第二回松田優作賞最終選考にノミネートされる。卒業後に書いた「ばぁちゃんロード」が、映画美学校プロットコンペティションにて最優秀賞を受賞し篠原哲雄監督により映画化。MOOSIC LAB 2018参加作品「書くが、まま」の監督・脚本を務め観客賞・最優秀女優賞(中村守里)を受賞。
水石さんと上村監督の出会いはオーディション

お二人の出会いからお聞かせください。

監督と初めてお会いしたのは、『根矢涼香、映画監督になる。』(※以下、ネヤカン)のオーディションでしたよね?

そうですね。1年ちょっとくらい前になりますね。

あれから毎日いろんな現場で撮影をしているのですが、オーディンションのときと比べて、印象が変わったところはありますでしょうか?

あまり変わらない…ですね(笑)。

えっ!? それはうれしいような、悲しいような…。

あ、もちろんマイナスな意味ではなくて、私にとって水石さんは挑戦を楽しんでいる印象があって、今回の対談もその挑戦のひとつだなって。

ありがとうございます! 素直にうれしいです。

私は俳優のみなさんの内面を見たくて、オーディションではエチュード(即興芝居)を長時間やってもらうことが多くて。ネヤカンのときも長時間お願いしましたよね?

はい、めちゃくちゃ長かったです(笑)。演技を楽しみながらも心の中で「い、いつ終わるんだ…」と思ってました。

そうそう(笑)。そこで水石さんから受けた印象は、芝居の柔軟性や応用力だけじゃなくて、キャラクターの引き出しがあること。そしてなによりすごくチャーミングで、挑戦することを楽しんでいると感じたんですよね。

実は昔からすごく緊張しやすくて、そして引っ込み思案なところもあるので、オーディションではとにかく楽しもうと意識しています。役を得ることを狙いながらも、ひと泡ふかせるじゃないですけど「かますぞー!」って気持ちを持って挑んでいます。

そんな気持ちが入っていたとは思いませんでした(笑)。でもそれはオーディションだからといって、審査する人の意向を勘ぐらずに自分を出すってことですよね。

そうです。斜に構えず全力で。役者はエンターテイナーだと思っているので、目の前にいる監督やプロデューサーを楽しませることができたら、きっと結果につながるはず…と思っています。

そのお話を聞いてすごくしっくりきました。水石さんのエチュードを見ていたときは本当に楽しかったし、他のスタッフも同じように感じていて、今回の啓太役は水石さんにお願いしようってすぐに決まったので。

本当ですか!? すごくうれしい! かましてよかったです(笑)。
自粛期間中はお互いリモートで映画撮影に挑戦

上村監督は自粛期間中に『親愛なる見ず知らずのあなたへ』を撮られていますが、リモートで映画を作ることにおいてどんな苦労がありましたか?

私は何かを作るときには実際に人に会いたい性分で、その人を知る手段はまず会うことだと思っています。それが自粛期間中で会えなくて、でもやっぱり一緒に作る方とは会いたいという気持ちが強くて、その気持ちをインタビューしていく作品を撮らせてもらいました。

本当はZoomなどのオンラインではなくて、実際に、リアルに会いたいということですよね?

そうです。個人的な考えかもしれないですけど、水石さんにお願いした啓太という役も、水石さんと私がいないと生まれなかったと思っています。もちろん周りの登場人物の絡んでくることですが、まず啓太という役は私ひとりでは生まれないし、水石さんひとりでも生まれない。

そうですね。

でもそれを50%と50%を持ち寄るのではなくて、100%と100%でつくりたい。そのために、実際に会って、間とか、目線とか、それこそ目を合わせたりなど、機微や所作事を知りたいと思っています。本作に出演してくださった岩切一空監督が「オンラインだとどうやっても目が合わない」と話されたことが真理だなと。

それは僕も思いました! 目を見たらカメラを見れないですから、どうやっても目が合わないんですよね。

いま「うんうん」とうなずいてくれているのも全部感じ取りたい(笑)。それこそ実際に動いてみたりとか、触れることでわかることや新たに気づくこともあるわけで。それがオンラインだと難しかったですね。

だとすると、あのとき僕がオーディションでかまして、一緒に啓太を作り上げていったことが100%と100%が重なり合う瞬間だったわけですね!

啓太という役は私には体験できないですからね。水石さんに演じてもらうことで、はじめて啓太の存在が確かなものになりました。やっぱり100%と100%が重なり合うことが、演出していて一番楽しい瞬間です。水石さんも自粛期間中に『ラスト リモート ショー』に出演されましたけど、撮影など、現場はどうでしたか?

当たり前が当たり前ではなくなりましたし、ありがたさをとても感じるようになりました。リモートでの撮影では、自分で照明をセットして、カメラの画角を決めます。これまでは照らしてくださる方がいて、音を録ってくださる方もいて、もちろん衣装もそうですし…。1人で必死になりながら「やっぱり1人じゃ無理だ〜!」となりました。改めて映画はみんなで作るものだと感じましたね。
『根矢涼香、映画監督になる。』の見どころ

最後に『根矢涼香、映画監督になる。』の見どころをお聞かせください。

社会や現場に出て、それまで憧れていたもの、自分の想像の中だけで追い求めていたものと、ぜんぜん違う現実に直面することがあると思います。本当に苦しくて、しんどいけれど、それでももう一歩だけ歩きだしてみようと思っている方たちの背中を押せる作品になれたらと思っています。ぜひご覧ください。

コロナ禍だからこそ響くものがあると思います。本作の登場人物は壁にぶつかりながらも生き生きとしている。だから、その姿や生き様を見るだけでも力がもらえるとはずです。「一緒にがんばろう」、「がんばってるよ」、そして「ちゃんと見てるよ」という思いが伝わったら嬉しいです。
©2020テラスサイド

1996年1月1日、神奈川県生まれ。ドラマ「あなたの番です。」「相棒17」、映画『青夏』映画『センセイ君主』など話題作に出演。「魔進戦隊キラメイジャー」では押切時雨役/キラメイブルーを務めた。近作に『鋼の錬金術師 完結編』がある。