松井玲奈インタビュー!『幕が下りたら会いましょう』は引っ込み思案な人にこそ観てほしい

テラスマガジン編集部

『幕が下りたら会いましょう』で映画単独初主演となる松井玲奈。妹の死をきっかけに過去と向き合う売れない劇作家を演じている。脚本段階から監督と何度も打ち合わせを重ねて挑んだ本作への思いと見どころについて伺った。

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『幕が下りたら会いましょう』あらすじ
実家の美容室を手伝いつつ、鳴かず飛ばずの「劇団50%」を主宰している麻奈美(松井玲奈)。劇団員の結婚祝いで集まって馬鹿騒ぎをしていたある夜、妹の尚(筧美和子)が資材置き場で亡くなった。その日、尚からの着信があったにもかかわらず電話に出なかった麻奈美は、複雑な思いを抱えてしまう。母親・京子(しゅはまはるみ)との新たな確執が生まれる中、劇団仲間の早苗(日高七海)と妹の部屋を引き払いに東京へ。様々な人々との出会いと再会を経て、自分自身と向き合っていくことになるが…

―今作『幕が下りたら会いましょう』は、妹の死をきっかけに過去と向き合うお話が中心に描かれています。誰しも目をそらしたい過去があると思いますが、松井さんはどのように対処されていますか?

「私はわりとそっとしておいて、そのうち忘れてしまうことが多いです。でも忘れたといっても心の引き出しの奥にぎゅうぎゅうに押し込まれていて、それがふとした会話だったり、見聞きしたものの影響によって出てくることがあります。時にはまた苦しくなることもあれば、その再会によって気持ちが軽くなって浄化されることもあったり。ある意味で時間が解決してくれる、自分が多くの経験をしていくことで新しい扉が開いていくのかなと思っています」

―劇作家への夢を追いかけてもがく主人公・麻奈美に対し、松井さんが共感できた部分はありますか?

「一番しんどい部分を誰にも相談せず、自分の中に溜め込むところは似ているかも(笑)“大変だ!どうしよう!できないかも!”と友だちに相談することはあっても、奥深くにある核のような部分は言わないです。伝えることで相手にも影響してしまうかもしれないので、自分の中で片付けちゃうことが多いと思います」

―お友だちのお話が出ましたが、本作は麻奈美と親友の早苗の関係がとてもリアルでした。一緒にいるからこそ劇団を続けられている二人。松井さんにとって、この人がいるから頑張れるという方はいらっしゃいますか?

「同い年で、すごくアクティブな友だちがいます。いろんなことに挑戦し、今も海外に留学していて、とにかく私と見えている世界が違う人。同じ年だけ生きているけど、吸収するものが全く違うと言いますか。それを常に私にフィードバックして教えてくれるんです。彼女の話を聞くのはとても刺激的で、見えるもの、感じることがこうも違うのかと楽しく感じています」

―キャッチコピーに<私たちには戻りたい夜が多すぎる>とあります。目にした誰もが自分にもあると感じてしまいますが、松井さんが戻りたいのはどんな夜でしょうか?

「誕生日の夜です(笑)私、誕生日にケーキをワンホール食べると決めていて、それを一年で一番楽しみにしているので戻りたいです。戻って何回でも食べたい(笑)」

―悔しい夜、挽回したい夜ではなく、楽しい夜だったのでびっくりしました…!

「普段もちょこちょこ食べるんですけど、ワンホール食べられるのが本当に幸せで。あ、ごめんなさい、誕生日とクリスマスの年に2回です(笑)」

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―幸せなお話をありがとうございます。辛い夜を考えるより、ケーキを食べる夜で上書きした方が楽しいですよね。続いて撮影でのエピソードをお聞きします。脚本段階で監督と何度も打ち合わせを重ねたとお聞きしていますが、いかがでしたか?

「物語を作る上で、核となるものがいかに大事かを学ばせていただきました。今回は家族の物語でありながら、パワハラを含む社会課題、人間関係のズレから起きる間違いなども軸にあります。でもいろんなことを付け足しすぎても、削ぎ落としすぎてもダメ。何を伝えたいのか、やっぱり家族の話ですよね、と何度も何度も話し合いました。どんどん稿を重ねていく中で、登場人物がより立体的になり、台本を読んでいると映像が浮かんでくるようになったことは、本当に貴重な経験と勉強をさせていただいたと思っています」

―ご自身の役を演じることにプラスして、物語を俯瞰的に捉えることでより鮮明に見えるようになられたのですね。

「これまでは完成した台本をいただいて、それを紐解いていくことが多かったです。今回は早い段階からスタッフのみなさんの作品に対する思いや、キャラクターに対する考えをお聞きできたので、より深く入り込んでいく感覚を持てたことを本当にありがたいと思っています」

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―紐解いていく前の、編むところも経験された松井さんのこれからのご活躍がとても楽しみです。『幕が下りたら会いましょう』はどのような方に観ていただきたいですか?

「私が演じた主人公の麻奈美は、すごくぶっきらぼうで、感情表現が苦手で、自分の内側にこもりがちな女性です。なので、相手に本心を伝えるのが怖いとか、本当は嬉しいのに素直に喜べない方はぜひ!私自身も素直になれないことが時々あって、本作に参加したことで言葉や気持ちは風化する前に伝えなくちゃと思ったので、引っ込み思案な人にこそ観ていただきたいです」

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―本作は最後にとある印象的なシーンが流れますよね。あのシーンについて教えてください。

「ありがとうございます!実はすごく緊張して、監督と頑張りましょうねと言いながら撮ったシーンです。どんな編集になるか知らなかったので、完成したものを観たときは終盤で“あんなに頑張ったのにカットされた…!”と落ち込みました(笑)でも結果として一番いいところで使っていただいたので、是非エンドロール明けまでお席を立たずに観ていただきたいです」

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『幕が下りたら会いましょう』
監督 / 前田聖来 出演 / 松井玲奈、筧美和子、しゅはまはるみ、日高七海
公開 / 11月26日(金)より新宿武蔵野館 他
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撮影:神藤 剛(shinto takeshi)
文:永井勇成

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