高柳明音「サンタクロースは居ます!」クリスマスムービーの名作『34丁目の奇跡』を観る 2021.12.19


高柳明音さんが、シネマスコーレ副支配人の坪井篤史さんを師匠にお迎えし、映画マスターを目指します。第三回はクリスマスムービーの名作『34丁目の奇跡』をご覧いただきました。あなたはサンタクロースを信じますか?
『34丁目の奇跡』のあらすじ
キャリア・ウーマンの独身ママと、サンタクロースを信じない6歳の少女の前に謎の老人が現れた。クリスと名乗るその老人は、自分は本物のサンタだと言う。有名デパート、コールズは彼を客寄せのサンタとして雇い入れ、彼は一躍人気者に。だが、ライバル店の陰謀によってクリスは逮捕されてしまう。彼は、気の触れた哀れな老人か、本物のサンタなのか。前代未聞の裁判が始まった。
高柳明音
たかやなぎあかね|1991年生まれ、愛知県出身。2009年にSKE48の2期生メンバーとしてデビュー。21年4月にグループを卒業し、現在は女優・タレントとして舞台、バラエティ、ラジオなど幅広く活躍中。
坪井篤史
つぼいあつし|1978年、愛知県生まれ。シネマスコーレ副支配人。小3の時に映画と映画館の神様から啓示を受け、死ぬまで映画と映画館で生きると決めたアブナイ人。

12月と言えばクリスマスですね!そこで今回は『34丁目の奇跡』をご覧いただきました。自分はサンタクロースだと名乗る老人が逮捕され、裁判にかけられてしまう…という物語ですが、高柳さんがどう感じたのかとても気になります。

サンタさんと女の子が写っているジャケットから、ファンタジーだと思って観始めたら結構リアル路線でびっくりしました。

クリスマス映画と言えばファンタジー路線が多い中で、本作はちょっと違いますよね。作品の中身にふれる前にまずお聞きしておきたいのですが、高柳さんはサンタクロースを信じていますか?

もちろんです。信じていると言いますか、居ます!(笑)

素晴らしいですね。ちょっと聞き方がむずかしいのですが、小中学生のころにお友だちとサンタさんがいる、いないのお話はしなかったですか?

しました。(笑)やっぱりクラスに必ず一人は「サンタなんていないよ!」ってわざわざ言う人がいて、毎年その時期はみんなの話題になってました。でも、枕元にプレゼントを置いているのが親だとわかってもショックはなかったです。

それはプレゼントを持ってくるからサンタなのだ、ではなくてサンタの存在そのものを信じているということですね。まさしく今回の作品の内容とも重なってくる部分になってきました。

そうです。でも本作はメインキャストの女の子がサンタさんを信じていないところから始まりますよね。すごく現実的で、夢あふれる物語じゃないの!?と冒頭でびっくりさせられました。

シングルマザーのお母さんはデパートの企画部長で、サンタを物を売るためのイベントキャラとしか考えていない。だから女の子も実は信じたいと思いながらも信じられない。そこに自称サンタが現れる。(笑)

でも私は自称サンタと名乗るおじいさんを、最初から本物のサンタさんだと思って観ていたので、どうしてみんな信じないのかと…

良いところを突いてきますね。ネタバレは避けますが、オチも含めて本作は全編を通して観る人の「信じる心」を試してくるんですよね。作中でも、おじいさんをサンタと信じる人もいれば、ただのおかしな老人だと怒る人もいる。とても見せ方が上手くて、観ている途中で「やっぱり本物だ!」と思うこともあれば、逆に「あれ、このおじいさんは変なのでは?」と感じてしまうこともある。

私はサンタさんに関しては絶対にいると信じているので、おじいさんを変な人だとは思わなかったですが、言われてみると誰もが本物のサンタクロースだと納得させる描写はないですね。見方によっては上手く交わしているような…。でも手話のシーンは絶対泣けるはず。(笑)

手話のシーンも含めて、子ども視点で描いているので疑って見ていても信じそうになる瞬間があると言いますか。そもそもサンタ役のリチャード・アッテンボローが名監督であり名俳優なんです。だからこそ説得力が増していますし、どう演じれば信じられそうか、疑われそうかがわかっている。だから現実味がありながら、ハートウォーミングなお話なんです。

子どもにはすごく優しくて、とにかくサンタさんが与えてくれるクリスマスの夢を守ろうとしますよね。反面、大人に対しては結構リアルに対応するところも面白かったです。サンタの能力?特別な力?それ以外はまさにただのおじいちゃんと言いますか。

裁判劇になるにつれて、リアルだけどユーモアがあるんですよね。サンタだってバカにされたら怒るぞと。(笑)

「違うもん!本当にサンタだもん!」って、まるでトトロいるもんって叫ぶメイちゃんのようでした。小中学生のときにサンタはいないと言われたことを思い出して、裁判では共感しかなかったです。

いる、いないのお話で、いないと主張する人が言うのは「プレゼントをくれるのはサンタじゃなくて親」ということ。でもそれは別のお話で、親がプレゼントを置いたとしてもサンタがいない証明にはならないわけで。

そうなんです!いる、いないじゃなくて、信じる、信じないってことで、どうやって持ってくるとかそんな問題じゃない。信じる心を取り戻す、それが奇跡だと教えてくれる本当に素敵な作品でした。

クリスマス映画には定番や有名作がたくさんありますが、今この作品を紹介できることが嬉しいです。タイトルは聞いたことがあっても、最初から最後まで観たことがない人も多いのではないかと。ぜひこの機会に観てほしいです。

あっ!最後にひとつ思い出しました。冒頭のパレードのシーンで、チーバくんそっくりなバルーンが出てくるのでぜひチェックしてほしいです。この時代(1994年)、ニューヨークにチーバくんがいるはずもないのに、あまりにも似すぎてて。横向きのチーバくんがフレームインしてくるので刮目してください。(笑)
©2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
『34丁目の奇跡』
ブルーレイ発売中/デジタル配信中
©2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
撮影:森山貴史(高柳明音、坪井篤史)
文:永井勇成

1991年生まれ、愛知県出身。2009年にSKE48の2期生メンバーとしてデビュー。21年4月にグループを卒業し、現在は女優・タレントとして舞台、バラエティ、ラジオなど幅広く活躍中。